台風波のアロー・バーズで感じた心象風景_『嘘のない存在、場所、そして瞬間』_(3303文字)
「あ、あんなところで波が割れています」
と湾の中奥深くまで到達したうねりを見つけた緑くん。
普段はおだやかな内海で、
海面の起伏は、外海が爆発していることを知るインジケーターだろう。
後部座席には、
雑誌取材で島に来られている椎葉順さん、田中英義さん、
編集の中野さん、そして写真家のCHARさんが乗っていた。
車内から、
県道越しに海が見えるたびに波の大きさが伝わってくる。
波をよく知るこのエキスパートサーファーたちは、
波を見るたびに寡黙となっていった。
それは海への恐怖ではなく、畏怖と尊敬が彼らの(俺も含めて)思考にあり、
数時間後にはその波群と相対する緊張が重く全身を浸していた。
美しい波は、ときに牙を向いて人に襲いかかってくる。
その怒濤のような海からのメッセージは、
どんな祈りもむなしく俺たちにのしかかってくる。
強力で分厚いうねり、鋭い飛沫の牙群、ギロチン刃のような切っ先、
速く、深く、前後左右上下自在な恐ろしい混沌のかたまり。
意識があるのかないのか、または宇宙的な啓示なのか。
そこまで波を思惟(しゆい)し、
自分自身を解放しながらその波に近づこうと、
それを滑ろうと決意するまでのプロセスが俺は好きだ。
冒険家は、
誰も来ない場所、入ったことがない、
靴跡もない指紋もついてないところを求めているが、
俺たちサーファーは、
いつも誰も乗ったことがない、
無垢で純粋な海からのメッセージに乗ることができる。
同じ場所でも全く違う波。
それらは毎分、毎秒届き続け、優しかったり、嬉しかったり、
怖かったり、恐ろしかったりと、受ける人によって様々な心象となるが、
それらドラマを全身で受け止めている。
波の小さい、
つまり穏やかな海の日はあまり感じないが、
「大自然に相対する人」
とは、じつにちっぽけで貧弱なる存在だということを実感させてくれる。
怖いときもあるし、そうでないときもある。
ただ、肌でヒリヒリと感じることがある。
『嘘のない存在、場所、そして瞬間』
そんな定義がこんな波の日には蒸気のように立ちのぼり、
吸い寄せられるようにパドルアウトしていく自分がいる。
昨日も書いたが、こちらは台風の影響で天候不安定でして、
大雨が降り、そして止むと美しい色彩が現れる。
波のメッセージを至近距離で映してみた。
穴蔵なのか、思考の底、
いや空か宇宙に投げ出されたかのような一瞬があった。
勇生さんのバレル。
深く、速く、そして複雑なるバレル。
速度を求め、そしてラインを読み続けながら解放までのラインを模索していく。
彼のブログはこちら
http://ameblo.jp/usei-amami/entry-10974693744.html
アロー・バーズは岬(ポイント)波。
つまりこここそが「ポイントブレイク」。
横に大岩があり、
そこにぶつかった波が横に動き重なってきて、
ピークが奇妙に掘れ上がったり、より強いリップを形成したりと、
より複雑なテイクオフセクションとなる。
あなたのワイルドさと、大きな勇気が試されるだろう。
ただ果敢すぎても危険だし、
自身を極限まで押しだすことができないと、
一日待っていても波に乗ることはできない。
掘れ方はたっぷりなのだが、
バレルセクションの距離が信じられないほど長いので、
メイクのためにはさまざまなドラマがあり、
それらをすべて通過した後に至福が待ち受けている。
上が英義さんで、下がテッタさん。
下のシークエンスは、
椎葉順さんのものだが、
ここにアロー・バーズのバレルの長さが映っている。
ここからさらにバレルは続いていく。
世界でもトップクラスの波なのは間違いない。
真夏の凄波。
それを裸で滑る至福。
こんな日の波の下は、
「ある決意」を秘めているかのように見える。
このように降りてしまうと、バレルには入ることができない。
テイクオフしながらボードを引き上げて、横へのラインに乗せる。
逆を言うと、速い波はバレルに入るしか抜けられる道がないのです。
ニコリン奄美王子の緑くん。
「奄美はさいこうよ〜」
と、どこまでも優しきローカリズム。
そんな島人の懐の広さも俺が奄美大島を愛する理由のひとつです。
NAKISURFファミリーの二神さんのタックイン。
バレルを回避しているのは誰だ?
俺はバレル内なので、
こうして見ると、中か外かで違う世界が存在している。
メイクできないと奈落の底に落とされる。
今回の潮は、
水深が浅いところだと腰程度なので危険を伴うが、
それと引き替えに美しい波があるのだから文句は言えない。
□
緑くんが、
俺の波乗り写真を撮ってくれていたので、ここに掲載しますね。
ありがとうありがとう〜!
テイクオフエリア。
前の波に隠れて見えづらいが、ファーストセクション。
「SURFSURFSURF」Tのハレの場でした。
http://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/23814
長ーく乗ってきて、インサイドセクション。
観光大使の親善ラウンドハウスカットバック。
そうだ、BD3がいつもの5’0″になったのです。
奄美初日に
「シゲさんにお借りした5’1″に乗っています」
http://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/24083
とブログアップしたら、
その二時間後にNAKISURFファミリーのAさんが、
「フナキさんは、確か5’0″でしたよね。よかったらこれ、使ってください!」
と、市内からグリーンヒルさんまでわざわざ持ってきてくださいました。
「うわあ、感激ですぅ」
といつもの5’0″でこのアロー・バーズ波を滑ることとなったのです。
不思議なことです。
Aさん、大切なボードを本当にありがとうございました!
波乗り後は、
泳ぎながらの写真撮影なので、海面にずっと顔を出していなくてはならず、
たっぷりとココサンシャインを塗った。
上の写真はマンゴーブラウンを下地に薄く塗り、
そしてさらにハイポイントに分厚く塗った状態です。
こちらの下画像はホワイト最大塗り。
到着初日でした。
これまで五日間、空港と東京にいたので、
ちゃんと太陽を浴びていないのと、奄美の猛烈な紫外線に怖くなり、
ココナッツホワイトをバリバリに塗ったら、行き交う人が驚いていた。
緑くんも、
「これ、さいこうね〜。奄美には必需品ね」
とヘビーローテーションされています。
□
幾億もの波。
これはきっと誰の意志からでもなく、
つまり台風九号ムイファーの猛風から発生し、
自然の摂理として海岸に届き続けている。
ある波はねじれ、ある波はまっすぐで、またある波は豪快だった。
でもその中には、一本として無駄な波はないはずだと哲学者なら考えるだろう。
サーファーたちは、その波群を見据え、最上の場所に集い、沖に漕ぎ出て、
自分にとっての最良なる姿形を見いだし、波面を滑走していく。
http://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/24106
今回の奄美旅は、観光親善大使の任命式があるというので、
サーフボードもウエットスーツも持たずにふらりと来たのだが、
前回見たウミガメの水中写真を撮ろうと、カメラハウジングだけを持ってきたら、
こんな歴史的な波に当たってしまった。
そこでボードは友人からお借りし、
さらには足ヒレはグリーンヒルさんのレンタルを使用させていただき、
それこそミニマルなサーフトリップだったが、得たものは絶大なのであります。
縁と偶然。
こんなことも旅を彩ることであり、
さらには人とのつながりを感じた波乗り旅でした。
奄美旅はまだ続きますが、
台風接近で、暴風域に入ってきたので、
少しのあいだ読書に没頭しようと思っております。
ちなみに今読んでいるのが、北方三国志の巻五であります。
張飛の話が好きです。
いつかはじまった大きい波。
これがいつか小さくなるように、
いつかはじまった旅もいつか終わるのだろう。
俺の波への愛と、まだ見ぬ波への果てぬ夢は続いている。
波も海もやはり大きく、そして永遠だった。
改めて小さな俺を発見したムイファー波。
奄美でこの波に出会えて良かった。
どうか陸地で暴れないでくださいね。
それではまた明日!
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