「森のバター」
とされるアボカド。
ほんのり甘くて、まろやかで、
くちの中でやさしく温かく溶けていく。
ここメキシコ・サユリータで食べるアボカドは、
いままでどこで食べたアボカドよりも甘くて、
味が濃く、
豊満な風味がある。
これは樹が吸い上げた大地の風味、
海からやってきた南西風にからまって、
遊ぶ子どもたちの嬌声、
ママたちの世間話。
そしてソル(太陽)と、
木の下で歌われた音をからめたノチェ(夜)をたっぷり通過してきたから
こんな哲学みたいな味になったのだろうか?
このねっとりとしたアボカドを使って、
トマト、
タマネギ、
コリアンダー、
塩、
ハラペーニョ唐辛子。
そしてライムをたっぷり絞って混ぜると、
ワカモレ(Guacamole)という芸術的な食べ物となる。
コーンをすりつぶして焼いたトルティーヤがあり、
それを揚げたトトポス(totopos、トルティーヤ・チップス)
でこのワカモレをたっぷりとすくって口に入れる。
アボカドと揚げたコーン、
そしてハラペーニョ唐辛子の余韻が残るうちに
喉に直接流しこむビールのうまさといったら、
記憶が揮発し、
しばし呆然となる。
もう一回、
もう一度と、
同じようにおおぶりのトトポスをつかみ、
尽きることのないワカモーレをすくい、
喉にビールを繰り返し落としていくころには、
その日の記憶が流れるようにピカリチカリと輝きはじめ、
たっぷりと浴びた太陽のあたたかさが戻ってくる。
逆光の靄(かすみ)のかなたについさっき乗った波があり、
とっくに忘れてしまった子どものころの夢が、
あれもこれもとかけもどってくる。
少年になった俺は、
あのときの夢を追いかけながら時間が消えていく。
□
工場が近いからか、
新しいからかはわからないが、
どこで飲むよりもおいしいメキシコビール。
俺はこの旅ではパシフィコ(右)を好んだ。
ネグロ・モデロもどっしり重くていいが、
ソーダのように飲むにはこれがいい。
一本10ペソ=70円。
瓶代が3ペソなので、
瓶を返すと50円となる。
レストランで飲むと200円くらいだろうか。
日本と同じで、
公共の場で飲酒可の国だ。
また一本、
もう一本と重ねるころには夜が更ける。
老舗の「サユリータ・タコス」。
どうしたことか連日の閑古鳥。
前回来たときには並んでも入れないほどの大盛況だったのに、
諸行無常だと、
法王のお顔を思い出していた。
東京に大雪を降らせた低気圧からの波がこちらまで届いた。
これは北西うねりなので、
南西に向いたこの浜には、
そのかけらみたいなサイズだった、
だが、
遠く日本から止まることなくやってきたうねりはやはりパワフル。
サユリータ岬の北側にレフト波を見つけた。
イスラエルに「あのブレイク名は?」
と聞くと、
「うーん、レフトだけかな」と返ってきた。
「え、スポットに名前がないの?」
「ないよ」
「ふーん」
という無名くんではあるが、
なかなかにおもしろい斜面でありました。
日本から来たうねりに日本人が乗る。
そう考えると郷愁漂うようである。
こちらのローカルは、
セットが入る度に叫んだり、
歌ったりとやたら陽気でうるさいが、
誰にでもやさしく、
そしておおらか。
これは当たり前だが、
ローカルだから偉い、
そうでないからだめだという概念がない。
ビーチもサーファーだけでなく、
地元民みんなできれいにしていて美しく保たれている。
ローカルたち=ビーチボーイズは、
それぞれサーフボードレンタル、
サーフショップ、サーフスクールの講師、
釣り道具レンタル、
ビーチチェア&パラソルレンタル業などを営み、
俺たちビジターをそれぞれの形でもてなし、
それをビジネスにしているようだ。
https://www.nakisurfshop.com/SHOP/5281.html
拙著【虹色の波乗り旅】(ビームス社刊)は、
ここ小百合太を舞台にした作品も多いので、
一冊持ってきてカレンダーと一緒にイスラエルに進呈すると、
それはそれは喜んでくれた。
街のデザイナーであるクリストファの
B&B(ベッド&ブレックファスト)HAFAはこんな部屋姿。
屋上にあるリビングルームでBD3さまを休ませておいた。
このリビングルームは、
テキーラやウイスキーが飲み放題。
飲まなかったけど、
ハード系を好む方なら気に入るだろう。
一泊税込みで70ドル。
プロレス系タコス屋の開店時間。
それではまた明日(アスタマニャナ)!
すばらしい週末となりますように!
◎